仕事帰りや旅先で、気になったお店にふらりと入ってみたい。誰かと約束していなくても、もっと気軽に飲みに行きたい。そんな風に「ひとり飲み」を楽しむ女性が増えています。 自由にマイペースに楽しめる、女性のひとり飲みにぴったりなお店をご紹介します。

高円寺のレトロな古書店『コクテイル書房』で本を片手にひとり飲みを楽しむ夜

※営業時間・定休日・メニュー等が変更となる場合があります。詳細は店舗までご確認をお願いいたします。

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レトロな空間が魅力の高円寺の古書店『コクテイル書房』

JR中央線の沿線でも、商店街が元気な街として知られる高円寺。高円寺駅北口から10分ほど歩いたところにある「北中通り商栄会」は、昔ながらの食堂や居酒屋を始め、古着屋、美容室などの個人店が並ぶ庶民的な街並みの商店街です。

「コクテイル書房」外観イメージ

そんな商店街の中で、ひときわ目を引く木造の建物が古書店『コクテイル書房』。

昭和初期に建てられたという家屋のひなびた味わいが、のどかな街並みによくマッチしています。この写真を撮っている間も、隣のお蕎麦屋の奥さまがご近所さんとずっと立ち話をしていて、そんな光景につい心が和みます。

「コクテイル書房」店内イメージ

ここは古本屋であり、酒場でもあるちょっと変わったお店。店内の本棚を始め、カウンターや天井の近くまで本がびっしり並んでいます。

お店に置いてある本はもちろん購入が可能。本のラインナップは文学を始め、美術や哲学、建築、映画まで幅広い品ぞろえ。街の新刊書店では売っていないような本をあえて置いているのだそう。

カウンターで飲みながら気になる本を手に取ってみてもいいし、本だけを見に来てもOK。こんなにたくさんの古本に囲まれながら料理やお酒を味わえるなんて、なんと乙な時間なのでしょう。

「コクテイル書房」店内イメージ

店内にはアンティークの柱時計や火鉢、囲炉裏の自在鉤、福助人形といった、かつての日本の生活で使われていた道具が置かれていて、なんだか祖父母の家に来たような懐かしい雰囲気。2階には猫がいて、時おり天井のすき間からニャアと顔を覗かせるのもたまらない。

この店の主役はもちろん古本なのだろうけど、古材を使ったカウンターやむき出しの階段など、古いものをセンスよく設えた空間はどんなに眺めても飽きることがなく、レトロ好きならずとも魅了されてしまうはず

古本屋はマニアックな雰囲気で入りにくいと感じる人もいると思うので、敷居の低い古本屋として入ってもらえたらいいなと思います」と、店主の狩野 俊さん

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本に登場する料理を再現した「文士料理」を味わえるお店

「コクテイル書房」店主イメージ

狩野さんが作るのは、いろいろな作家の小説やエッセイに登場する料理をアレンジした「文士料理」。高円寺に店を構える前から古書店を営んでいた狩野さんの料理好きが高じて、文士料理のアイデアが生まれたのだそう。

読むことと食べることは似ていて、さらに書くことと拵えることは同じではないか」というのがお店のコンセプト。そう言われてみると、たしかに文学と食には何か共通点があるようにも思えてきます。

一見、淡々と飄々とした雰囲気の狩野さんですが、お話ししてみると実直な人柄がじわじわ伝わってきて、てらいのない語り口とにじみ出る人間味が魅力的な方。

そしてお品書きが原稿用紙というのも、いかにも文士にちなんだ酒場らしくて洒落ています

「コクテイル書房」の原稿用紙に書かれたメニュー

メニューには旬の素材を使った和食を中心に、檀一雄「檀流クッキング」に登場する「大正コロッケ」や、中原中也の詩からヒントを得た「文学ポテサラ」など、文学をテーマにした料理が並びます。

「コクテイル書房」お通しイメージ

お通しは日替わりで、この日は「赤かぶの甘酢漬け」と「自家製チャーシュー」。

「コクテイル書房」の「鮭の焼き漬」

無頼派の作家である坂口安吾にちなんだ料理「鮭の焼き漬」。安吾の故郷である新潟の郷土料理で、鮭の切り身を焼いて醤油ダレに漬け込んだもの。醤油がしみ込んだ鮭の旨味がじわりと広がって、日本酒を誘う味です。

白いご飯にもとても合いそうだけれど、坂口安吾はこの鮭をほぐしてサンドイッチにするのが好きだったそう。
作家の好物や食にまつわる話の中には珍妙なエピソードも多く、遠い存在に思えていた文士たちの人物像が生き生きと浮かび上がって、にわかに親しみが湧いてくるから不思議。

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文士にちなんだお酒やカクテルをゆっくり飲みながら本に親しむ夜

「コクテイル書房」の「太宰サワー」

そして、文士にはお酒にまつわる逸話が多数あり、お酒と文学は切っても切れない関係。『コクテイル書房』では文士が好んで飲んだお酒や、作品をイメージしたオリジナルメニューが揃っています。

「走れメロス」などの作品で知られる作家・太宰治にちなんだ「太宰サワー ウヰスキイ」は、ウイスキーと焼酎にりんごジュースを加え、ソーダで割ったカクテル。好みで入れるグレナデンシロップは、太宰の短編小説に出てくる一説をイメージしたもの。

こんな風に一つひとつの料理や飲み物にストーリーが添えられていると、味わいがぐんと深まるように感じます。そして、その作家が書いた作品にも興味が湧いてきませんか

「コクテイル書房」店内イメージ

ときおり柱時計がボーンボーンと鳴り響く店内にいると、不思議な静けさに包まれている感覚。たくさんの本に音が吸収されるのか、あるいは古い建物や昔の道具たちが放つオーラのせいでしょうか。

いつもより時間がゆっくりと流れるような、一人の時間を満喫するにはぴったりの場所。実際、お店には一人で訪れる女性客も多いのだそう。
最近見た映画の話なんかをきっかけに、おひとり様同士でも自然と両隣りに会話が広がっていきますね。お客さまには本や音楽などカルチャー好きの方が多いので、共通の話題が生まれやすいのかも」と狩野さん。

この素敵な空間で好きな本や映画の話をしながら飲めるなんて最高に幸せ…まさにサブカルの街・高円寺らしい、文化系女子にはどストライクすぎるお店です。

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お店の味を家飲みで楽しめる、自家製のレトルト食品も販売中

「コクテイル書房」のレトルト食品「文学の食卓」

そして『コクテイル書房』のもう一つの自慢が、文学をテーマにした自家製のレトルト食品「文学の食卓」。

家飲みのおつまみに最適な「つぶ貝酒粕煮」や、飲んだ後の締めにぴったりな「心平がゆ」など全5種類を用意。レトルトなので常温で保存できるのも魅力。

「コクテイル書房」の「文学カレー」

同じくレトルトの「文学カレー 朔太郎」は、手羽先をメインの具材にし、酒好きの萩原朔太郎が二日酔いの朝でも食べやすいようイメージした爽やかな味わい。
ほか、夏目漱石の好物である牛肉をたっぷり使った「文学カレー 漱石」も人気。「文学の食卓」や「文学カレー」はお店のメニューにも登場します。

自家製のレトルト食品は以下のオンラインショップで購入できるほか、お店でも販売しています。
www.koenji-cocktail.info/

「コクテイル書房」店内イメージ

これらの商品は、店の奥にある「工場」で狩野さんが自ら作ったもの。
2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大による自粛休業中にお店を大改装し、構想から約1年かけてレトルト食品を作る設備を整えたのだそう
世界一美しい工場」を目指したというだけあり、きらきら輝くシャンデリアが象徴的。

これによって、お店でしか味わえなかった「文士料理」を家でも楽しめるようになりました。「遠方に住んでいる方や台湾から注文が入ったりと、コロナ禍で店に来てもらえない人にも購入してもらえました。ここで調理から加工までやっているので、レトルトといっても味にはちょっと自信がありますよ」。
これからは古書店と酒場に加え、食品製造業も店の柱のひとつに据えていくつもりだとか。

「コクテイル書房」店内イメージ

「文学カレー」は本のようなパッケージデザインも秀逸

2020年以降、コロナ禍による営業自粛や休業を経たことで、お店の在り方について狩野さんの心持ちも変わっていったのだそう。そこには、長年お店を支えてくれたお客さまの存在が大きかったといいます。
緊急事態が明けて店を再開したときに、お客さんがとても喜んでくれたんです。以前は飲み屋の店番なんて止めたい、と思った時期もあったけど、今は店をやるのがとても楽しいし、自分や店の存在価値に改めて気づけたことは大きかったですね。」。

「コクテイル書房」店内イメージ

表の壁にある「まちのほんだな」は、自宅にある本を持参して本棚の中の本と交換できるユニークなスペース。自分が持ち寄った本をどんな人が選ぶのか…想像するとちょっとワクワクしませんか。
本を売ることだけではなく、本を読んでくれる人を増やす、特に紙の本に親しんでくれる人を多くするのも、本屋の重要な仕事だと思う」という狩野さん。

サブカルチャーが盛んな街でもありつつ、昔からの地域のコミュニティも根付いている高円寺は、古いものと新しいものがいい具合に混ざり合う街。そんな高円寺を、狩野さんは「風通しのいい田舎」と表現します。
子どもが生まれて妻と2人で店番をしていた頃は、隣のお蕎麦屋の奥さんが赤ん坊を抱っこして面倒を見てくれたり、この街にはそういう人付き合いが今も残っているんですね。だけど、プライベートには踏み込みすぎない適度な距離感がある。そんなところが高円寺の心地よさかもしれません」。

新しい本との出合いを求めて、そして文士が愛したお酒や料理を楽しみに、ぜひ高円寺へ来たら『コクテイル書房』を覗いてみてください。

店舗情報
コクテイルショボウ
コクテイル書房
電話をかける
電話番号:03-3310-8130
東京都杉並区高円寺北3-8-13
JR中央線 高円寺駅 北口より徒歩10分
3,000円~4,000円
定休日 火休
営業時間 18:00~21:00
店舗情報
定休日 火休
営業時間 
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